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コケモモ さんへ捧げ物♪ [→セシュカ]

■コケモモ さんへ捧げ物♪
■コケモモ さんから頂き物♪
■ねこしょうかい★
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■コケモモ さんへ捧げ物♪
コケモモさんに素敵なお話を頂戴しました!
挿絵っぽい物がようやく完成したので捧げ物~★

kokemomo100823Sixyaguna.jpg
コケモモさんのみお持ち帰り下さい♪

コケモモ さんのブログ『ARIAN RHOD』はこちら

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■コケモモ さんから頂き物♪
こちらが素敵な頂き物dです(>ワ<///
セシュカとシャグナ君の関係記念小説ですよ!
わぁいvvv
セシュカの関係者増えたvvv<嬉しい(^^)

以下続きに原寸有ります、本文と共にお楽しみ下さいv
 ̄ ̄『ガラスの割れゆく音』 ̄ ̄

漆黒の天に微かに輝く白銀の月。
その、美麗にも、恐ろしくも感じる事の出来る、緩やかな曲線を静かに見つめる者がいた。
開け放った窓から、気味悪いほどの優しい風が入り込む。
足首どころか、踵ほどまで伸びたパステルグリーンの髪を優しく風に揺らす少女。
透けるように白い肌に、深緑色の瞳が光る。
柔らかいウサギのぬいぐるみを抱きかかえ、少女は窓辺に佇んでいた。
彼女の瞳には何が写っているのか、ただ、寂しげな光が浮かんでいる。
少女の名はセシュカ。
生まれながらに高い能力を持ち合わせている反面、病弱な体で毎日付き纏う、死という現実。
幼い彼女には、その事が理解する事は出来なかったが、自分の体について思う事は多々あった。
周りの者は、彼女に深い愛情を注いだ。
セシュカ自身も、その愛情を感じ、その者達に心配を掛けまいといつも明るく振舞っていた。
一人になった今、明るい笑顔は消え、ただ、空を見つめている。
セシュカのいる部屋に、明かりは無く唯一の明かりといえば、彼女の見つめる細い月。
その光は、落ち着いた装飾の施された窓に当り、儚く消える。それを繰り返していた。
堅く閉じられた扉の隙間から覗く目立たぬ光には、彼女の部屋を照らすことはできない。
そんな光と共に扉の奥から聞こえるのは、沢山の大人の大きな声。
彼らにとっては、大切な事を話しこんでいるようだが、セシュカにとってはただの騒音にしか聞こえなかった。
セシュカは、扉を向いて溜息をつく。
先程までは、小さなオルゴールの音色によって、声は掻き消されていた。
しかし、その音色が消えた今となっては、必ず耳に入ってくる。
それ程までに声を高めて、どんなに大切な話をしているのだろう。
突然、そんな疑問がセシュカの脳裏に浮かんだ。
さほど、気にも留めていなかった騒音に、少し興味を持った。
意を決したように、ぬいぐるみを一瞬だけきつく抱きしめ、小走りで扉へと向かう。
重い扉を、非力な少女が押し開ける。
力を込めるうちに、次第に扉はゆっくりと開いていった。


丁度、セシュカの通れるほどの幅ができるのに、そう時間はかからなかった。
小さく開いた扉から、顔を出し辺りを見回す。
メイドや、使用人のいない事を確認すると、セシュカはサッと首を引込めた。
抱きしめていたぬいぐるみを、彼女の眠るには大きすぎるベッドに置いて、布団を掛ける。
一度だけ、深く息を吐くと、セシュカは会議の行われている部屋へと向かった。


部屋の前に行くと最早、怒声に近い声で議論を繰り広げていた。
偶に、鋭い声が聞こえ、五月蝿かった声も低まるのだが、それも長くは続かず元の大きさに戻っていく。
「……では?」
「いや…のほうが…」
途切れ途切れだが、そんなことが度々聞こえてくる。
漏れてきそうになる欠伸を堪えて、セシュカは扉に耳を付けた。
「シャグナ様と、こちらのお嬢さんを会わせてみたらいかがでしょう?」
「セシュカを、ですか…?」
「ええ。名前は…セシュカさんとおっしゃられるのですね」
「…はい。では…いつになさいますか?」
自分の名前が出てきて、思わずセシュカは扉から耳を離した。
口元を押さえて、早くなった呼吸を抑える。
もう一度、耳を付ける気にはならなかった。
自分の知らない間に勝手に物事が進められているという事に対しての微かな苛立ちと、それに対してそんな感情を抱いてしまう、自分が怖くなったのだ。


不意に会話が止み、椅子を押す音がした。
その音を聞き、慌てて物陰に隠れるセシュカ。
扉を開き、部屋から出てきたのは、父と仕立ての良いブレザーを着た、いかにも貴族風の身形をした男だった。
廊下の途中で一度立ち止まり、二人は固い握手を交わした。
すぐに手を離すと、そのまま廊下を曲がって行った。
二人が完全に曲がりきったのを確認すると、温かな布団を求めて、セシュカは自室へと戻って行くのだった。


次の日の朝、セシュカは父に、出掛ける、と、一言だけ告げられた。
自分が昨日盗み聞きしていた事を悟られぬように、俯きながら朝食を、少しずつ口へ運んでいたセシュカは、無言でコクン、と頷いた。


その後、早々と朝食を済ませた父は、使用人に馬車を用意させた。
あまり、いつもと変わらない余所行きの服に着替えたセシュカは、父の背を追って馬車に乗り込んだ。
これから、きっと、昨日の話に出てきたシャグナという人に会うのだろう。
セシュカは、一人そう考えていた。
昨日、父と話していたあの男はその人に『様』を付けて呼んでいた。その人は、偉い人なのだろうか。
そんな疑問が、彼女に浮かんだ。
父もセシュカも、御者さえも話さず、沈黙がこの場に渦巻いていた。
ただ、軽やかに地を蹴る馬の蹄の音は、皆の耳に入っていたのだった。


窓から、顔を出すようにして景色を眺めていたセシュカの目に、大きな城が入った。
白く、高い城壁に囲まれ、手入れの行き届いた中庭。
その中庭に咲き誇る花々。
どれも、冷めていたセシュカの心に温かい火を灯した。
城門の前で馬車が止まり、父が扉を開け外に出た。
セシュカも、自分側の扉を開き、外へ出る。
昨日、小降りの雨が降った為か、多小地がぬかるんでおり、慎重にセシュカは歩みを進めた。
城門の前には、鎧を着た兵士が二人、城を守るかのようにして立っていた。
御者と父が何やら兵士に話しかけている間、セシュカは城壁に刻まれた幾何学的模様を、見つめていた。
見つめていると、何処か不思議な気分になった。
しかし、それも束の間。
父に声を掛けられて、セシュカは城門を潜った。


城の中に入ると、慌ただしく、人が動き回っていた。
皆、その表情には焦りが浮かび、何かを探すかのように頭を動かしていた。
「いらっしゃいませ。ご訪問頂き感謝いたします。しかし…ただ今シャグナ様が不在でございまして…」
丁寧に頭を下げて挨拶をするメイドを押し退けて、昨日の男がやってきた。
「遠い所からわざわざご苦労様です。今、メイドが言ったように、シャグナ様が、朝突然いなくなられたのです」
「それは…!わたし達も、捜索手伝わせていただきます。セシュカを部屋へ案内していただいてもよろしいでしょうか?」
男が頷き、先程のメイドを呼ぶと、セシュカを部屋へ案内するように、と早口で伝えた。
命じられたメイドは、頭を下げるとセシュカの手を引いて、一つの部屋へと連れていく。


案内された部屋は、来客用の部屋なのだろう。
整理された部屋の所々に置かれる、目立たない色の家具。
薄いカーテンの奥には、小さく開いた窓があり、そこから優しい風が吹いていた。
「セシュカ様。私どもは廊下に出ておりますので、心行くまでお寛ぎくださいませ」
微笑み、頭を下げると、メイドは廊下へと出た。


メイドの居なくなった後、セシュカはベッドに座り込んでいた。
触り心地のよい布団の敷かれたベッドには、セシュカと共に、クマのぬいぐるみが座っている。
そのぬいぐるみを、引き寄せて膝の上に座らせる。
一つ、溜息をつくと、ぬいぐるみをギュッと抱きしめた。
コンコン
突然、窓をたたく音が部屋に響いた。
音に驚き、セシュカはビクリ、と体を震わせる。
振り向いた窓には、小さな人影。
好奇心をそそられて、セシュカはベッドを飛び降りると、窓に手を掛けた。
軽い音がして、窓が開く。
窓の後ろに立っていた者。
それは、セシュカより2歳ほど年上の少年だった。
幼いながらも、黒っぽいスーツを着ている。
銀色の髪のかかった顔には、悪戯っ子のような笑みが浮かんでいた。
「よう。いらっしゃい。我が城へ」
そう言って少年は、優雅に礼をした。
我が城、という事はこの少年が、あの“シャグナ”なのだろう。
「それで…キミが、あのセシュカって人?」
軽い口調でシャグナが話しかけてきた。
「はい。私がセシュカです。貴方の名前は、シャグナさんでよかったですか?」
「そう。オレがシャグナ。宜しく。…入ってもいいか?」
その言葉で、ハッとしたようにセシュカは窓から、身を避けた。
シャグナが部屋へ入ってくる。
そのまま、セシュカの手を引き、ベッドに腰掛ける。
「セシュ。外、行かないか?」
突然、シャグナが口を開いた。
先程まで、外にいたというのに。
そう思って、シャグナを食い入るように見つめてしまう。
彼の薄い真紅の双眸に、戸惑いが浮かぶ。
「どうかした?」
「あっ…い、いえ」
セシュカは顔を伏せた。
「あっそ。…それで?どうする。行くの?行かないの?」
多少、心配はあったが、先程までの好奇心を抑えきれずに、セシュカは頷いていた。
それを見て、シャグナは嬉しそうに微笑んだ。
それから、何か伝えようと口を開いたとき。


「セシュカ様?何やら物音がございましたが、大丈夫でしたか?」
メイドの声が扉を通して聞こえてくる。
慌ててシャグナを見ると、さほど驚いた様子も見せず、ニッと笑ってベッドの下に潜り込む。
失礼します、と声を掛けてメイドが扉を開けて中へ入ってくる。
「セシュカ様、何もございませんか?」
「私は、大丈夫。…あ、私、クッキーが食べたいです。頂けますか?」
「勿論でございます。何かあったら、またお申しつけてくださいませね」
メイド服のスカートの裾を摘まんでお辞儀をすると、部屋を出ていった。


「セシュ、ありがとう。お前のおかげで助かったよ」
口ではそう言っているが、シャグナの顔には楽しそうな笑みが浮かんでいる。
「もう少し、緊張感を持ってください!」
怒ったように頬を膨らませ、セシュカがそっぽを向く。
「ごめん、ごめん。オレ、こういう事には慣れっこなんだ。だから、許してくれない?」
「ダメです!シャグナさんの態度は軽すぎます!」
手を合わせるシャグナに牙をむくように言い返すセシュカ。
「分かった。分かったから、外、行こう。…オレ、息苦しくなってきたんだけど?」
「外、ですね。…でも、どうやって?」
「オレが、普通に部屋から出ていくと思う?」
シャグナの問いかけに、セシュカは思いっきり首を振った。
「シャグナさんは、絶対に、そんな事はしません!」
あまりにもはっきりとしたセシュカの態度に、シャグナは溜息をつく。
「セシュ。キミのはっきりとした態度に、傷ついたのはオレだけじゃないと思う」
そう言ったシャグナを、手に持っていたぬいぐるみで一度だけ殴った。
ぬいぐるみは柔らかい為、痛くはないのだが、シャグナは殴られた部分を痛そうに押さえる。
「ごめん、セシュ。殴るのはもう良いから、外に行く準備をしてくれないか」
シャグナは立ちあがって、自分のいたベランダへと、歩いて行く。
その背について、セシュカもぬいぐるみを抱きしめて、半ば小走りでベランダに出た。
慎重に、窓を閉めると、シャグナに向き直る。
「それで、どうやって下に行くんですか?」
二人がいた部屋は3階。
普通に飛び降りたら、小さな二人の体にどれ程の負担が掛るか分からない。
「安心しな。一番、安全な方法で下に降りるから」
そう言って、シャグナはセシュカに背を向ける。
「オレが、セシュカをおぶって下まで降りる。セシュカ、軽そうだから心配しなくても大丈夫」
セシュカが乗りやすいように、しゃがみ込んだシャグナの背に、おずおず、といった様子で摑まるセシュカ。
彼女が乗ったのを確認すると、シャグナはベランダの手摺に飛び乗った。
「しっかり、首に摑まってろよ」
それだけ言って、シャグナは手摺から足を離した。
風が顔に当り、目を開けていられなくなる。
それ以前に、セシュカは堅く、目を瞑っていた。
その為、いつ、地に着地するのか、全く分からなかった。
着地の際は、当然衝撃を予測していた。


しかし―――
「セシュ?もう、降りていいよ」
シャグナがそう声を掛けて来た時には、驚いた。
恐る恐る、目を開くと、そこは中庭だった。
セシュカの背から、シャグナが回していた手をゆっくりと離す。
それに伴い、セシュカもシャグナの首から手を取る。
「さあ、セシュ、行こうか」
立ちあがったシャグナが、セシュカを振り向く。
「ええ。シャグナさん、どこに―――」
セシュカの言葉が遮られる。
「シャグナ様と、セシュカさん、発見いたしました!」
そんな声が飛んできたからだ。
声を上げたのは、城門を守る兵士。
その声を聞きつけて、城の中から、沢山の人々が出てきた。
先程の叫びから、いつの間にかセシュカも捜索されていたようだ。
「あーあ。見つかっちゃった」
頭の後ろで手を組んで、つまらなそうにシャグナが呟いた。
「また、遊ぼうな。セシュ」
セシュカに軽く手を振ると、シャグナは城へと歩みを進めていった。
また、その背について行こうとしたら、メイドに捕まってしまった。
「セシュカ様!どこかへ行かれては困ります。お父上も、ご心配されていらっしゃいましたよ」
メイドはそう言うも、まわりに父の姿はない。
「お父上は、長官とお話し中です。なので、ご心配なさらなくても大丈夫ですよ」
優しくセシュカの頭を撫でながら、メイドは微笑んだ。
「今日はお泊まりなさるとのことでしたので、先程のお部屋をそのままお使いくださいね」
メイドに背中を押され、セシュカは城へと戻って行くのだった。


その日の夜。
セシュカは、何かの音で目を覚ました。
寝ぼけ眼を擦りながら、セシュカはぬいぐるみを抱きしめた。
何かの音―――それは、話し声だった。
隣の部屋には父がいる。
父と、あの男が話しているのだろう。
ベッドに潜り込んでも、もう一度眠りに付けそうになかった。
布団を剥がして、起き上がると、扉に手を掛けた。
盗み聞きをもう一度する気になれなかったが、何を話しているのか、その事が気になって頭から離れなかった。


二人のいる部屋の前には、誰も立っていなかった。
部屋の扉に、少し隙間があり、薄暗い廊下を明るく照らしていた。
その隙間から、部屋の中を覗くと、やはり、二人の姿があった。
何やら話しこんでいるようで、周りに聞かれる事を気にしていない声だった。
「お子さんは、病弱なようで…」
「はい。昔から、体の弱い子でした」
「そうですか。しかし…シャグナ様の嫁に、という事は、次期妃となるわけで。
 残念ながら、この話は白紙に戻させていただきます」
「分かりました。少しでも、お相手していただけただけでもとてもよかったと思います」
そう言って、父が男に頭を下げるのが見えた。
セシュカに見えたのはそこまでだった。
突然、後ろから伸びてきた手に、視界を塞がれてしまったからだ。
思わず、悲鳴を上げようとすると、口も塞がれてしまった。
「セシュ。盗み聞きなんて、趣味悪いぞ」
耳元から聞こえてきたのは、シャグナの声だった。
視界を塞ぐ彼の手を外し、後ろを振り向く。
そこには、先程と変わらぬシャグナが立っている。
「長官の話は、盗み聞きしない方が良い。…立ち話も何だから、セシュの部屋、いいか?」
そう尋ねられて、頷くセシュカ。


部屋に入ると、シャグナは電気をつけた。
部屋の中央に吊るされたライトが、薄暗い部屋を明るく染める。
「あのさ、時間ないから、急ぎ足で話すけど、よく聞けよ」
そこまで言って、一度、言葉を切る。
「オレは、今夜出掛けるから、もう会えないと思う。だから…最後に挨拶でも、と思ってさ」
「どこに…どこに、出掛けられるんですか?」
「どこにって…セシュカに言っても分かんないよ」
シャグナは、困ったように微笑んだ。
白い指を握りしめて、セシュカは顔を上げる。
「もう、会えないの?」
一番、彼に尋ねたかった事が、口を衝いて出た。
セシュカの問いかけに、シャグナは少しだけ俯く。
「多分、会えない。何か、縁がない限り、絶対に」
一言、一言、区切りながらシャグナが、語りかけるようにセシュカに言った。
廊下から、シャグナを呼ぶ声が聞こえてくる。
「じゃあ、オレ、行くから。また、会えればいいな」

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悲しそうな色が浮かんだセシュカに慰め掛けるように、優しく微笑んだ。
最後に、セシュカの髪を優しく撫でると、シャグナは部屋を出ていった。
扉の閉じる音がすると、セシュカはベッドに向かった。
布団を被り、ぬいぐるみを今になく堅く抱きしめた。
別れというものを理解できていないわけではなかった。
幼いながらも、しっかりとその事を教えられてきたのだ。
周りの者に、温かく、優しく育てられてきた彼女にとって、殆ど無縁のものだったのだ。
それが突然、すぐ近くに来た為に、困惑しているのだった。
自然と、頬を涙が伝った。
いつの間にか、仲が良くなっていたシャグナとの別れに涙した。
枕に顔を押しつけるようにして、セシュカは静かに泣いていた。
窓の外は、少しずつ、少しずつだが、明るい光が差し込んでいた。


それから、11年の月日が流れた。
幼かったセシュカも、いまでは15歳へと成長を遂げていた。
昔と変わらず、周りの者に愛され、優しくも温かく育てられた彼女は、毎日が幸せだった。
不幸な日など、殆ど感じられなかった。
この日も、両親の元へと行く為に、いつも隣にいるメイドと共に、各地を回っていた。
急いでもセシュカの体に毒、そう考えた両親は、メイドに景色のよい場所を周り、休養として旅行をすればよい。
そう伝えたのだった。
出発の日、あまり体調の優れなかったセシュカは、最初、元気をなくしていたが、次第に元気を取り戻して来ていた。

「お日様が優しくて、とても良い気持ちね」
この日に泊る、ホテルの近くにある展望台に来て、セシュカはメイドにそう、微笑んだ。
「そうでございますね。ここからの景色がとてもよくて驚きましたわ」
「景色がキレイなのもあるけど、この温かい日差しが気持ちいいのよ」
そう言って、セシュカは、大きく上に伸びをした。
温かな風が吹き、彼女の髪を優しく揺らす。
セシュカとメイドの立つ場所にある手摺に、可愛らしい小鳥がとまった。
「まあ、可愛らしい。お嬢様、この鳥は、ハミという小鳥でございますよ」
「そうね。…触れても大丈夫かしら?」
彼女の問いかけにメイドが頷いたのを確認すると、セシュカはハミに手を伸ばした。
ハミは、セシュカの触れられると気持ちよさそうに目を細め、両翼を大きく羽ばたかせ飛び去った。
先程まで、ハミが止まっていた場所に、一枚の羽根が落ちている。
セシュカは、その羽に手を伸ばすと、嬉しそうに眺めた。
「ハミの羽は、貴重なものでございます。旅の記念に、お持ちいたしたらいかがでしょう?」
メイドの案に、セシュカはゆっくりと首を横に振った。
そして、手にしていた羽を空中に離す。
激しく吹いた風に乗り、何処かへと吹き飛ばされてしまった。
「羽は、野にあるべきものなのよ。私のような者が持っていても何もすることができないわ」
「失礼致しました。お嬢様、陽が影って参りました。そろそろ、ホテルに戻りましょうか」
セシュカは、頷くと、メイドを連れ立って、ホテルへと戻って行った。


その日の夜。
静かなホテルが、騒然と騒がしくなった。
気になって、メイドに黙って一人、ロビーに出てきたセシュカ。
セシュカの見たロビーには、小さな人だかり―――皆、良い形をしている―――ができていた。
人々が、何やら話しているのに聞き耳を立てる。
すると、シャグナ、危険、大怪我。
そんな、言葉を聞きとる事ができた。
その中の、シャグナ、という言葉に、セシュカの昔の記憶が蘇ってきた。
昔、一度だけ遊んだ、あのシャグナ。
11年前の記憶ながら、ありありと手に取るように思い出せた。
聞いた話を繋ぎ合わせると、戦場で命に関わるほど、危険な怪我を負った。後退先として、このホテルへ泊る。との事だった。
どうしようかと考えていると、自らの生まれ持った力を思い出した。
人がいなくなったシャグナの部屋に入り、自らの力を使う。
いつもは、おとなしい彼女の脳裏に、大胆な考えが浮かぶ。
このままでは危険。そんな声も聞こえてきた。
一度は躊躇ったものの、彼を救うにはこれしかない。
そう考えたセシュカの顔には、もう迷いは浮かんでいなかった。
それまで体を休めようと、部屋へ戻ろうとした彼女は、もう一度だけ、人だかりを見た。
二人の男の持つ担架から、包帯の巻かれた腕が覗いていた。
夜が更け、生物も植物さえも、眠りについてしまったこの時間。
セシュカは、休めていた体を起こし、シャグナの部屋へ向かった。


不用心にも、扉が半開きになった部屋に、入ると、ベッドに人が眠っているのを見つけた。
首から下に、包帯が巻かれ、今は眠っているようだが、呼吸が浅い。
セシュカは手を合わせると、祈るように目を瞑った。
これから、彼女の行おうとしている事。それは、祈り。
祈り―――彼女の生まれ持つ力。自らの生命力を削り、相手を治癒する事。
彼女にとって、自らを危機へ陥らせるような行為だが、シャグナの為に、と、この力を使うのだった。


治癒が終わる頃、セシュカの視界が霞んできた。
多少、傷跡は残るが、致命傷になるような傷はセシュカによって治った。
シャグナの指が、ピクッと動いた。
ハッと、したように、顔を上げると、痛む頭を押さえて、逃げるように部屋を出た。
それと共に、壁際に置かれていたガラス細工が落ち、割れた。
ガラス細工の割れゆく音と共に、自分の命の危機を感じた。
しかし、その音で微かに目を開けたシャグナは、その柔らかな髪を見ていた。
彼の脳裏にも、昔の記憶が浮かんでいるのだろうか。
痛みに顔を顰め、また、すぐに深い眠りへと落ちていった。


次の日の朝、セシュカは旅立ちの用意をしていた。
元々、両親の元へと向かう旅行だった為、それ程時間がとれずに、次の場所へと移動するのだ。
第一、シャグナに自らの姿を見られる前に、ここを出たかった。
疲労の浮かんだ顔を見られるのが怖かった。
変わった、そう言われるのが嫌だったのだ。
しかし―――
ガタン
扉の方で、物音がし、セシュカは驚いて振り向いた。
そこには、扉に背を置き、足で入口を塞ぐように反対側の壁を抑えている、シャグナの姿があった。
昨日よりはまだ、回復したようだったが、包帯がまだとれず、その表情は辛そうだった。
「セ…シュ。昨日、お前が、オレの部屋にいるのを見た」
苦しそうに、顔を歪ませて、シャグナが呟くように言った。
「お前が、回復してくれたんだろ?」
その問いかけに、セシュカは顔を伏せて、頷いた。
「ありがとう…それと、また、会えたな」
シャグナは、そう言って嬉しそうに微笑んだ。
「セシュは、もう、行くみたいだけど、オレは、また、会えると思ってる、から」
それだけ言い残して、シャグナは、ふら付きながら部屋を後にした。
その背に向かって、セシュカが、
「また、絶対に、会いましょう…!」
と、叫びかけた。
一度だけ、セシュカの方を振り向いて、昔見せたような悪戯っ子のような笑みを浮かべて、シャグナが頷いた。
彼の姿が階下へと消える時、開け放った扉の奥から、凄まじい風が吹いた。
その風に乗って、ハミのキレイな羽が、浮かんでいるのが見えた。

__2010-08-15 コケモモ さん:作__

コケモモ さんのブログ『ARIAN RHOD』掲載ページはこちら

コケモモさんとちょっとやり取りする機会があったので、色々と妄想してたコトとか書いたらOK貰えちゃって、しかもこんなに立派なお話になりました!!!
数行でかいつまんで説明しただけだったのに、コケモモさんスゴイ!(>ワ<///
シャグナ君の小さい頃とか描けてメチャメチャ楽しかったです♪<幸せw
遠い親戚で少期間遊んだ仲で関係頂きました♪
本当に凄く遠い親戚です、シャグナ君王族ですもんw(^^)<先祖で嫁に行った人がいるとかそんな感じw
それにしても、素敵なお話に仕立て上がっていてホントにコケモモさん凄いなぁvvv
素敵なお話をありがとうございます★
_____

■ねこしょうかい★
猫写真の紹介です(笑)<別名:親ばかコーナーです(>ワ<///
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takara_05-19 posted by (C)ゆきじ
うとうと


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コメント 2

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コケモモ

こんにちは(*´ω`*)
本当は25日に気がついていたのですが、
時間が取れなかったので、コメント残せませんでした;
申し訳ないです(。><。)

初見の時、このカワイイ子は誰だろう・・・
などと考えていたのですが、読み進めていくうちに
これはシャグナなのねッ(゜д゜;)
状態でした←
その後、PC画面を眺め過ぎて目が痛くなったほどでs((
幼少期シャグナはこんなにも可愛らしかったのね…
と、暫くボーっとしてましたw
セシュカちゃん、書かせていただきありがとうございましたッ
毎度、ゆきじさんにはお世話になっていますが、
これからも、是非宜しくお願いいたします♪
セシュカちゃん、関係結んでくれてありがとう(^^*
これからも、しっかり妄想させてくださいね←

しっかりと、お持ち帰りさせていただきましたッ
また、ゆきじさんコレクションが増えた(。>ω<。)
ありがとうございましたッ

乱文コメント失礼いたしました
by コケモモ (2010-08-28 17:22) 

ゆきじ

>コケモモ さま
ありがとうございます♪
コメント、時間のあるときじゃないと難しいですよね(^^)
ゆきじも結構あって、「ぅにゃ~っ」ってなってますw
niceは頂戴出来ていたので、ちゃんとチェックはして下さっただろうと思ってましたのでご安心を~v
シャグナ君に限らず、コケモモさん宅のカワイコさん達の小さい頃なんて中々描けるチャンスが無いのでそりゃ~もう、大喜びで描いちゃいました★
今度、セシュカとシャグナ君の会話でちょっとヤキモチ妬きそうな可愛いガイア君が描きたいw<にやにやw
でも、本当に素敵なお話をありがとうございました~ッ(>ワ<///
by ゆきじ (2010-08-28 18:00) 



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