くろさん塗り絵・お話/希紫ルオン さんから♪ [→しんり・くろ・ぽとふ]
■希紫ルオン さんから頂き物v
■くろさん塗り絵w
■『ピアス』くろさん話♪
■ねこしょうかい★
_____
・1/25 ツィーイさんお誕生日おめでとうございましたvvv お祝いは後日(^^///
_____
■希紫ルオン さんから頂き物v
くろさんを描いて頂きましたvvv
≫希紫ルオン さんのブログ『海星』はこちら
くろさん原型ですvvv
お洒落な帽子とピアス、大事な指輪も装備してますよ(>v<///
ほんとに凄く可愛いですvvv
ルオンさん、素敵なくろさんをありがとうございました♪
お気に入り過ぎてメインブログTopページからリヴリーへのリンク画像に使用させて頂いておりますw
_____
■くろさん塗り絵w
ゆきじ宅くろさんと希紫ルオンさん宅の鷲庵さんの線画を塗って頂きました★
◆希紫ルオンさんに塗って頂きました♪(2012.12.31)
くろさん塗り絵を希紫ルオン さんに塗って頂きましたvvv
≫希紫ルオン さんのブログ『海星』はこちら
線画♪(クリック別窓原寸)
どしどし塗ってゆきじと希紫ルオン さんにプレゼントしてあげましょうv(笑)
_____
■『ピアス』くろさん話♪
遅くなりましたがくろさんがピアス穴を開けたお話(^^///
- - - - - -
『ピアス』
「お世話になりました」
「はい、お大事にー」
受付で退院の諸手続きを済ませ礼を言うと、ニッコリと送り出される。
「お待たせ、鷲庵」
ロビーで荷物番しながら待つ鷲庵の元へ戻る。
入院中に使っていた荷物は昨日までに持ち帰っておいたから、大き目のスポーツバックと紙袋一つに納まった。
もっと多くなると思っていたけれど箱ティッシュはポケットティッシュに、コップは紙コップに、歯ブラシもスリッパも「一晩だけ我慢して下さいね、主様」と昨日蝶子が使い捨ての物と交換してくれていたお陰だ。
「ありがとう、手数をかけてすまんな」
「そんなの少しも手間じゃないよ。それより、退院おめでとう、鷲庵!」
少しだけ申し訳なさそうに微苦笑する鷲庵に心からの笑顔で祝いを口にする。
8月2日。
鷲庵の退院の日。
記憶はまだ戻らないけれど怪我の具合は日に日に良くなり、記憶を戻すキッカケにもなるだろうからと自宅療養に切り替える事になった。
まるでお祝いするように晴れた夏の空は青くて白い入道雲とのコントラストが凄く綺麗。
「俺が持つよ?」
「だーめ。その代わり少し歩くだろ?」
「…持っても歩くよ?」
「ふふ、鷲庵が思ってるよりキツイと思うぞ」
ずっと病院だったし、何度か外泊した時も車で千龍寺まで往復して貰ったから退院した今日は少し歩いてみようって話になった。
それで俺が荷物の多いスポーツバックを持ったので、鷲庵が紙袋と交換しようと言うのだ。
当然ながら却下。
笑いながら手を繋いで通り抜け用にショッピングモールの大通りを歩く。
「あ」
「? どうした?」
俺がショーウィンドウの前で立ち止まるから鷲庵も隣に並ぶようにその中に目をやる。
ショーウィンドウの中には綺麗にレイアウトされた幾つかの宝石箱とキラキラ輝くアクセサリー。
「…どれか欲しいのか?」
「ううん。違うよ、コレ」
訊ねてくれる鷲庵にその内の一つを指し示す。
「?」
「この紅いの、鷲庵の瞳と同じ色なんだ」
深く濃い紅色の石の飾り。
「そう…かな」
「違うかもしれないけど、俺にはそう見えたの。…鷲庵が目を覚ますまで、毎日ここを通りながら見てた…」
今一つピンとこないと言った感じの鷲庵。
でも、俺にはそう見えた。
鷲庵が目を覚まさなかったら、と不安に泣きそうになりながらこの通りを歩いていた俺を励ますようにキラリと光を弾いて寄こしたのがこの石だった。
優しく微笑む時の鷲庵の瞳の色に良く似た色の石…毎日この道を通りながら、行きに帰りに通るたびにその色を見て一喜一憂して…
「早く本物の鷲庵の瞳が見たいって、思ってたんだ」
にっこりと隣の鷲庵を見上げる。
優しく微笑む鷲庵のその瞳は、深く濃い紅色。
「…ちょっと寄ってみようか」
「え?」
言うや繋いだ手を引いて店内に入る鷲庵。
店に入ると「いらっしゃいませ」と幾つか明るい声が挙がったけれどにっこりと会釈をしただけで無粋に近づいてセールスをしようと言う気配は無く、意識は向けているけれどゆったりとお買い物を楽しんで下さいと言う雰囲気が心地よかった。
クーラーが効いていて涼しく快適なのも、静かで耳に優しい音楽が流れている事もそう感じる一環だったかもだけれど。
「お客様、もし宜しければお荷物の方お預かり致しますが」
「ありがと、でも、見るだけだから…」
「はい、結構ですよ。ゆっくりご覧になって頂ければ幸いですから」
嫌みも無く穏やかな笑顔に断り切れず荷物を預けてゆっくり見る事にした。
色々な石があって、その宝飾も手が込んでいて見ていると楽しい。
零鷲や蝶子は好きそうだなぁとか他愛ない会話をしながら手を繋いで鷲庵と二人丁寧に見て回るけれどやっぱり足を止めたのは、あの紅い石の前。
「やっぱりコレがいいんだ?」
「…うん。やっぱりこの紅いのが凄く似てるんだ。鷲庵の目の色に」
そう返事をしたら、鷲庵が店員さんに声を掛けた。
「すみません、これ、出して貰っていいですか?」
「ハイ。カウンターでお待ち下さいませ」
「鷲庵?」
不安になって見上げると、いいからとあの紅い石と同じ暖かで深く濃い紅い色の瞳で鷲庵が微笑む。
カウンターでは端に設置されている椅子を勧められて腰掛けていると恭しく(?)あの紅い石が運ばれて来た。
「こちらで御座いますね? こちらの御石は…」
丁寧に説明されるけれど、残念ながら俺にはその価値はよく分からない。
ただ、鷲庵の瞳の色にとても似ていて、綺麗だと思うだけで…欲しいのかと問われればそれもよく分からない。
それでもその紅い石を前にするとドキドキする。
鷲庵を感じるみたいで、とってもドキドキするんだ。
…お守りみたいに感じているから…俺はもしかして、この石が欲しいと思っているのかな?
「現在はピアスタイプになっておりますが…イヤリングタイプへの加工変更も可能ですので…」
「くろは…ピアス無いよね? じゃぁイヤリングに」
「あ、あの」
鷲庵と店員さんが話を進める中、それを止めるよう鷲庵の袖を引くと「なに?」と笑みを向けてくれる。
「あのね、鷲庵。たのみ…いや、お願いがあるんだけど」
「うん?」
「俺にピアス、つけて欲しい…」
真っ直ぐに鷲庵の瞳に視線を合わせてお願いを口にする。
俺と鷲庵は過去に持っていた関係の全てを無くし、後ろ盾も立場もしがらみも、よるべさえ無いあやふやで不確かでここに在るだけの頼り無い存在でしか無くなった。
それは酷く不安で心許無い感覚だけど、そんな中にあって、ただ素直に俺は鷲庵が好きなんだと深く知る事が出来たから…その気持ちを留めて置きたいと思ったんだ。
「俺でいいのか? 記憶が戻ってからの方が良いんじゃ……」
俺の突然のお願いに鷲庵が驚いた顔をする。
「うん。鷲庵がいい。俺に幸せをくれた鷲庵に、ピアス、付けて欲しい」
昏睡から目覚めてくれた鷲庵に、素直に好きだと再確認させてくれた、今、目の前にいる大好きな人に、つけて欲しかった。
照れながらそう伝えると、鷲庵の表情にじわりと嬉しそうな色が浮かぶ。
「それに、この石は鷲庵の瞳と同じ色だし…鷲庵がつけてくれたら、鷲庵がいつも一緒に居てくれてる気持ちになるかなって」
流石に気恥かしくて視線を落としたら鷲庵にギュっと抱き締められた。
「じゅ、じゅあん」
鷲庵の腕の中でジタバタする。
本当はもう少しこうして居たかったけど、店員さん達のなんだか暖かい視線が恥ずかしい。
「お客様、加工はいかがなさいますか?」
鷲庵が離したのを良いタイミングとして担当してくれていた店員さんが声を掛ける。
「いや。加工は無しで・・・」
答えた鷲庵が途中で止まる。
ピアスを通す穴が無いことに思い当たったんだろう。
「安全ピンかなんかで開け」
「駄目だ!」
「いけません!」
・・・開ければいいよ。と言い終わるより前に駄目出しを鷲庵と店員さんに貰ってしまっては黙るしかない。
その間に鷲庵と店員さんはQ&A相談室の番組みたいに手際よく会話を進め、必要なモノを紹介し使い方を説明しメモし、手書きのイラスト説明の入った簡単なマニュアルのコピー等をつけて貰っていた。
「お客様のお選びになられました商品は純金素材を使用しておりますので、ファーストピアスとしても安全にお使いいただけます」
「そうですか。ありがとうございます」
テキパキと話を進め支払いを済ませ商品を受け取る鷲庵の姿は記憶が無いなんて思えないほどいつもの鷲庵だ。
「はい。くろ」
にっこりと小さくて可愛らしいサイズの紙袋を俺に差し出す。
中身を覗くと綺麗にラッピングされた小さな包み。
先ほどカウンターで包んでいたあの紅い石のケースだ。
「・・・っ! ありがと、鷲庵」
嬉しくて笑顔を向けると鷲庵の紅い瞳が優しく笑った。
千龍寺へ上がる長い階段の下には一足先に退院した良寛が待っていて俺と鷲庵の姿を見かけると駆けて来た。
嬉しそうに二人の持つ荷物を抱えるとさらに鷲庵も担いで千龍寺へ続く長い階段を上がる。
鷲庵は少し恥ずかしそうだったけれど、流石に退院したばかりの体力でこの階段は辛いらしく大人しくしていた。
良寛に続いて階段を登ると、時々鷲庵と目が合う。
すると鷲庵がバツが悪そうに苦笑するのが新鮮で、今まで良寛には俺様的に甘えてたんだなぁと微笑ましくなった。
でもきっとすぐに慣れてまた俺様的に甘えるんだと思う。
その日がとても楽しみだ。
多分、嬉しそうな足取りで先を行く良寛も、その日を楽しみにしてる。
「あーるーじー!」
「お帰りなさいましー、主さまー!」
階段上から掛かる声に顔を向ければ黒蝶と白蝶が早く早くと言わんばかりに手を振って迎えに来てくれていた。
途端に鷲庵は降りると言いだして、残りの数段だけは自分で歩いた。
家に帰ってから軽めの昼食、その後は居間の畳でごろ寝。
夏の風が心地良くて、手の触れる場所に鷲庵が居る事が一番心地よかった。
目が覚めたら風呂、一休みしたら夕飯と至れり尽くせりだ。
夕飯はいつもより早い時間で、病院の食事より少し遅い時間。
鷲庵の胃に考慮したのは明白で、退院お祝いだけどメニューも体に優しい物が多かった。
「もう少し体力が戻ったらもっと美味しいもの作りますわね」
鷲庵の箸のすすみ具合にニコニコと顔のほころぶ白蝶。
「白蝶ったら、主の好きなものばっかりじゃない。まったく甘やかしてー。コレは食べたの?主」
小言を言うフリをしながら無理の無いように鷲庵の皿に料理を取り分ける黒蝶。
そんな様子に嬉しそうな良寛。
もちろん俺も幸せな顔をしてると思う。
夜。
鷲庵の部屋は記憶を無くす前に調べていた様々な資料や報告書など色々な書類や書物がベッドの端まで埋めていて、記憶の無い鷲庵が生活するにはあまりにも不向きだと言うことで隣の俺の部屋に鷲庵の布団を持ってきた。
蝶子達が敷いてくれた布団を折って鷲庵と二人、座れるスペースを確保する。
今から俺と鷲庵で、二人にとっては特別な事をするんだ。
鷲庵が消毒済みのトレーに血止めを目的とした医療キットと今日買ってきたピアスを開ける道具を並べる。
俺は綺麗なリボンを解いて包みを開ける。
ベルベッドみたいな手触りの良いケースを開くと、鷲庵の瞳と同じ色の石が輝く一対のピアスが並ぶ。
鷲庵と二人でそれを覗き込んで、同じように少しだけ緊張しながら笑顔になる。
耳たぶをしっかりと消毒して予定の位置へ印をつける。
それから耳たぶを挟むようにしてピアスをセットした器具を印に合わせると鷲庵が深呼吸した。
「いいか?」
「うん」
俺の返事を聞いてから鷲庵が引き金を引いた。
バチンッ
「ッ」
痛みよりも耳元で鳴った音に驚いてビクリと体が強ばる。
「だ、大丈夫か?」
俺の体が強ばったのを見て鷲庵が心配そうに声を掛けてくれる。
「大丈夫、そんなに痛くないよ」
「そう か?」
血止めに用意した布を鷲庵に渡して笑うと少し安心したみたいに器具を外して留め具をつけた。
戦闘時の怪我と違って専用の針で開けたから、熱は持っているけどそれほど痛みはない。
暫く押さえていれば出血も落ち着くだろう。
「押さえとくよ」
「ああ」
出血した耳を布で押さえてくれていた鷲庵と持ち手を交代すると柔らかい布越しに耳とは違う人工物の感触が指にあたった。
あの紅い石がちゃんとついたんだなと思ったらちょっとドキドキした。
反対側の耳にも同じ手順でピアスを空け、出血が落ち着いたらピアスを覆うようにして脱脂綿にガーゼを巻いたモノを絆創膏で止めた。
「大丈夫か?」
「うん、ちょっと熱くて腫れぼったい感じがするけど、気にならないよ」
「そうか。良かった」
優しい微笑みを見せて俺の顔を拭いてくれるけれど、鷲庵の手に付着した俺の赤い血が何だか初夜を連想させて気恥ずかしくなって俯く。
「くろ?」
「ううん。ただ、嬉しいだけ。コレが俺と鷲庵の初めてだなって思って、嬉しいなって思っただけ」
嬉しくて恥ずかしくて、きっと赤い顔してると思うけど思い切って顔を上げて笑顔を見せる。
顔を上げたら鷲庵も赤い顔をして「そうだな」と頷いて「初めてで、始まりだな」と笑った。
- - - -終わり
記憶の無い鷲庵さんとくろさんの8月のとある一日のお話です。
ピアス開けちゃいましたよvvv
鷲庵さんの記憶が戻ったら腕の数珠を外して、守護術をピアスに掛けて貰う予定です♪
今度後日編書くよ、多分(笑)
_____
■ねこしょうかい★
猫写真の紹介です(笑)<別名:親ばかコーナーです(>ワ<///
neko08-06 posted by (C)ゆきじ
一緒♪(上からw
■くろさん塗り絵w
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お洒落な帽子とピアス、大事な指輪も装備してますよ(>v<///
ほんとに凄く可愛いですvvv
ルオンさん、素敵なくろさんをありがとうございました♪
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ゆきじ宅くろさんと希紫ルオンさん宅の鷲庵さんの線画を塗って頂きました★
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『ピアス』
「お世話になりました」
「はい、お大事にー」
受付で退院の諸手続きを済ませ礼を言うと、ニッコリと送り出される。
「お待たせ、鷲庵」
ロビーで荷物番しながら待つ鷲庵の元へ戻る。
入院中に使っていた荷物は昨日までに持ち帰っておいたから、大き目のスポーツバックと紙袋一つに納まった。
もっと多くなると思っていたけれど箱ティッシュはポケットティッシュに、コップは紙コップに、歯ブラシもスリッパも「一晩だけ我慢して下さいね、主様」と昨日蝶子が使い捨ての物と交換してくれていたお陰だ。
「ありがとう、手数をかけてすまんな」
「そんなの少しも手間じゃないよ。それより、退院おめでとう、鷲庵!」
少しだけ申し訳なさそうに微苦笑する鷲庵に心からの笑顔で祝いを口にする。
8月2日。
鷲庵の退院の日。
記憶はまだ戻らないけれど怪我の具合は日に日に良くなり、記憶を戻すキッカケにもなるだろうからと自宅療養に切り替える事になった。
まるでお祝いするように晴れた夏の空は青くて白い入道雲とのコントラストが凄く綺麗。
「俺が持つよ?」
「だーめ。その代わり少し歩くだろ?」
「…持っても歩くよ?」
「ふふ、鷲庵が思ってるよりキツイと思うぞ」
ずっと病院だったし、何度か外泊した時も車で千龍寺まで往復して貰ったから退院した今日は少し歩いてみようって話になった。
それで俺が荷物の多いスポーツバックを持ったので、鷲庵が紙袋と交換しようと言うのだ。
当然ながら却下。
笑いながら手を繋いで通り抜け用にショッピングモールの大通りを歩く。
「あ」
「? どうした?」
俺がショーウィンドウの前で立ち止まるから鷲庵も隣に並ぶようにその中に目をやる。
ショーウィンドウの中には綺麗にレイアウトされた幾つかの宝石箱とキラキラ輝くアクセサリー。
「…どれか欲しいのか?」
「ううん。違うよ、コレ」
訊ねてくれる鷲庵にその内の一つを指し示す。
「?」
「この紅いの、鷲庵の瞳と同じ色なんだ」
深く濃い紅色の石の飾り。
「そう…かな」
「違うかもしれないけど、俺にはそう見えたの。…鷲庵が目を覚ますまで、毎日ここを通りながら見てた…」
今一つピンとこないと言った感じの鷲庵。
でも、俺にはそう見えた。
鷲庵が目を覚まさなかったら、と不安に泣きそうになりながらこの通りを歩いていた俺を励ますようにキラリと光を弾いて寄こしたのがこの石だった。
優しく微笑む時の鷲庵の瞳の色に良く似た色の石…毎日この道を通りながら、行きに帰りに通るたびにその色を見て一喜一憂して…
「早く本物の鷲庵の瞳が見たいって、思ってたんだ」
にっこりと隣の鷲庵を見上げる。
優しく微笑む鷲庵のその瞳は、深く濃い紅色。
「…ちょっと寄ってみようか」
「え?」
言うや繋いだ手を引いて店内に入る鷲庵。
店に入ると「いらっしゃいませ」と幾つか明るい声が挙がったけれどにっこりと会釈をしただけで無粋に近づいてセールスをしようと言う気配は無く、意識は向けているけれどゆったりとお買い物を楽しんで下さいと言う雰囲気が心地よかった。
クーラーが効いていて涼しく快適なのも、静かで耳に優しい音楽が流れている事もそう感じる一環だったかもだけれど。
「お客様、もし宜しければお荷物の方お預かり致しますが」
「ありがと、でも、見るだけだから…」
「はい、結構ですよ。ゆっくりご覧になって頂ければ幸いですから」
嫌みも無く穏やかな笑顔に断り切れず荷物を預けてゆっくり見る事にした。
色々な石があって、その宝飾も手が込んでいて見ていると楽しい。
零鷲や蝶子は好きそうだなぁとか他愛ない会話をしながら手を繋いで鷲庵と二人丁寧に見て回るけれどやっぱり足を止めたのは、あの紅い石の前。
「やっぱりコレがいいんだ?」
「…うん。やっぱりこの紅いのが凄く似てるんだ。鷲庵の目の色に」
そう返事をしたら、鷲庵が店員さんに声を掛けた。
「すみません、これ、出して貰っていいですか?」
「ハイ。カウンターでお待ち下さいませ」
「鷲庵?」
不安になって見上げると、いいからとあの紅い石と同じ暖かで深く濃い紅い色の瞳で鷲庵が微笑む。
カウンターでは端に設置されている椅子を勧められて腰掛けていると恭しく(?)あの紅い石が運ばれて来た。
「こちらで御座いますね? こちらの御石は…」
丁寧に説明されるけれど、残念ながら俺にはその価値はよく分からない。
ただ、鷲庵の瞳の色にとても似ていて、綺麗だと思うだけで…欲しいのかと問われればそれもよく分からない。
それでもその紅い石を前にするとドキドキする。
鷲庵を感じるみたいで、とってもドキドキするんだ。
…お守りみたいに感じているから…俺はもしかして、この石が欲しいと思っているのかな?
「現在はピアスタイプになっておりますが…イヤリングタイプへの加工変更も可能ですので…」
「くろは…ピアス無いよね? じゃぁイヤリングに」
「あ、あの」
鷲庵と店員さんが話を進める中、それを止めるよう鷲庵の袖を引くと「なに?」と笑みを向けてくれる。
「あのね、鷲庵。たのみ…いや、お願いがあるんだけど」
「うん?」
「俺にピアス、つけて欲しい…」
真っ直ぐに鷲庵の瞳に視線を合わせてお願いを口にする。
俺と鷲庵は過去に持っていた関係の全てを無くし、後ろ盾も立場もしがらみも、よるべさえ無いあやふやで不確かでここに在るだけの頼り無い存在でしか無くなった。
それは酷く不安で心許無い感覚だけど、そんな中にあって、ただ素直に俺は鷲庵が好きなんだと深く知る事が出来たから…その気持ちを留めて置きたいと思ったんだ。
「俺でいいのか? 記憶が戻ってからの方が良いんじゃ……」
俺の突然のお願いに鷲庵が驚いた顔をする。
「うん。鷲庵がいい。俺に幸せをくれた鷲庵に、ピアス、付けて欲しい」
昏睡から目覚めてくれた鷲庵に、素直に好きだと再確認させてくれた、今、目の前にいる大好きな人に、つけて欲しかった。
照れながらそう伝えると、鷲庵の表情にじわりと嬉しそうな色が浮かぶ。
「それに、この石は鷲庵の瞳と同じ色だし…鷲庵がつけてくれたら、鷲庵がいつも一緒に居てくれてる気持ちになるかなって」
流石に気恥かしくて視線を落としたら鷲庵にギュっと抱き締められた。
「じゅ、じゅあん」
鷲庵の腕の中でジタバタする。
本当はもう少しこうして居たかったけど、店員さん達のなんだか暖かい視線が恥ずかしい。
「お客様、加工はいかがなさいますか?」
鷲庵が離したのを良いタイミングとして担当してくれていた店員さんが声を掛ける。
「いや。加工は無しで・・・」
答えた鷲庵が途中で止まる。
ピアスを通す穴が無いことに思い当たったんだろう。
「安全ピンかなんかで開け」
「駄目だ!」
「いけません!」
・・・開ければいいよ。と言い終わるより前に駄目出しを鷲庵と店員さんに貰ってしまっては黙るしかない。
その間に鷲庵と店員さんはQ&A相談室の番組みたいに手際よく会話を進め、必要なモノを紹介し使い方を説明しメモし、手書きのイラスト説明の入った簡単なマニュアルのコピー等をつけて貰っていた。
「お客様のお選びになられました商品は純金素材を使用しておりますので、ファーストピアスとしても安全にお使いいただけます」
「そうですか。ありがとうございます」
テキパキと話を進め支払いを済ませ商品を受け取る鷲庵の姿は記憶が無いなんて思えないほどいつもの鷲庵だ。
「はい。くろ」
にっこりと小さくて可愛らしいサイズの紙袋を俺に差し出す。
中身を覗くと綺麗にラッピングされた小さな包み。
先ほどカウンターで包んでいたあの紅い石のケースだ。
「・・・っ! ありがと、鷲庵」
嬉しくて笑顔を向けると鷲庵の紅い瞳が優しく笑った。
千龍寺へ上がる長い階段の下には一足先に退院した良寛が待っていて俺と鷲庵の姿を見かけると駆けて来た。
嬉しそうに二人の持つ荷物を抱えるとさらに鷲庵も担いで千龍寺へ続く長い階段を上がる。
鷲庵は少し恥ずかしそうだったけれど、流石に退院したばかりの体力でこの階段は辛いらしく大人しくしていた。
良寛に続いて階段を登ると、時々鷲庵と目が合う。
すると鷲庵がバツが悪そうに苦笑するのが新鮮で、今まで良寛には俺様的に甘えてたんだなぁと微笑ましくなった。
でもきっとすぐに慣れてまた俺様的に甘えるんだと思う。
その日がとても楽しみだ。
多分、嬉しそうな足取りで先を行く良寛も、その日を楽しみにしてる。
「あーるーじー!」
「お帰りなさいましー、主さまー!」
階段上から掛かる声に顔を向ければ黒蝶と白蝶が早く早くと言わんばかりに手を振って迎えに来てくれていた。
途端に鷲庵は降りると言いだして、残りの数段だけは自分で歩いた。
家に帰ってから軽めの昼食、その後は居間の畳でごろ寝。
夏の風が心地良くて、手の触れる場所に鷲庵が居る事が一番心地よかった。
目が覚めたら風呂、一休みしたら夕飯と至れり尽くせりだ。
夕飯はいつもより早い時間で、病院の食事より少し遅い時間。
鷲庵の胃に考慮したのは明白で、退院お祝いだけどメニューも体に優しい物が多かった。
「もう少し体力が戻ったらもっと美味しいもの作りますわね」
鷲庵の箸のすすみ具合にニコニコと顔のほころぶ白蝶。
「白蝶ったら、主の好きなものばっかりじゃない。まったく甘やかしてー。コレは食べたの?主」
小言を言うフリをしながら無理の無いように鷲庵の皿に料理を取り分ける黒蝶。
そんな様子に嬉しそうな良寛。
もちろん俺も幸せな顔をしてると思う。
夜。
鷲庵の部屋は記憶を無くす前に調べていた様々な資料や報告書など色々な書類や書物がベッドの端まで埋めていて、記憶の無い鷲庵が生活するにはあまりにも不向きだと言うことで隣の俺の部屋に鷲庵の布団を持ってきた。
蝶子達が敷いてくれた布団を折って鷲庵と二人、座れるスペースを確保する。
今から俺と鷲庵で、二人にとっては特別な事をするんだ。
鷲庵が消毒済みのトレーに血止めを目的とした医療キットと今日買ってきたピアスを開ける道具を並べる。
俺は綺麗なリボンを解いて包みを開ける。
ベルベッドみたいな手触りの良いケースを開くと、鷲庵の瞳と同じ色の石が輝く一対のピアスが並ぶ。
鷲庵と二人でそれを覗き込んで、同じように少しだけ緊張しながら笑顔になる。
耳たぶをしっかりと消毒して予定の位置へ印をつける。
それから耳たぶを挟むようにしてピアスをセットした器具を印に合わせると鷲庵が深呼吸した。
「いいか?」
「うん」
俺の返事を聞いてから鷲庵が引き金を引いた。
バチンッ
「ッ」
痛みよりも耳元で鳴った音に驚いてビクリと体が強ばる。
「だ、大丈夫か?」
俺の体が強ばったのを見て鷲庵が心配そうに声を掛けてくれる。
「大丈夫、そんなに痛くないよ」
「そう か?」
血止めに用意した布を鷲庵に渡して笑うと少し安心したみたいに器具を外して留め具をつけた。
戦闘時の怪我と違って専用の針で開けたから、熱は持っているけどそれほど痛みはない。
暫く押さえていれば出血も落ち着くだろう。
「押さえとくよ」
「ああ」
出血した耳を布で押さえてくれていた鷲庵と持ち手を交代すると柔らかい布越しに耳とは違う人工物の感触が指にあたった。
あの紅い石がちゃんとついたんだなと思ったらちょっとドキドキした。
反対側の耳にも同じ手順でピアスを空け、出血が落ち着いたらピアスを覆うようにして脱脂綿にガーゼを巻いたモノを絆創膏で止めた。
「大丈夫か?」
「うん、ちょっと熱くて腫れぼったい感じがするけど、気にならないよ」
「そうか。良かった」
優しい微笑みを見せて俺の顔を拭いてくれるけれど、鷲庵の手に付着した俺の赤い血が何だか初夜を連想させて気恥ずかしくなって俯く。
「くろ?」
「ううん。ただ、嬉しいだけ。コレが俺と鷲庵の初めてだなって思って、嬉しいなって思っただけ」
嬉しくて恥ずかしくて、きっと赤い顔してると思うけど思い切って顔を上げて笑顔を見せる。
顔を上げたら鷲庵も赤い顔をして「そうだな」と頷いて「初めてで、始まりだな」と笑った。
- - - -終わり
記憶の無い鷲庵さんとくろさんの8月のとある一日のお話です。
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鷲庵さんの記憶が戻ったら腕の数珠を外して、守護術をピアスに掛けて貰う予定です♪
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neko08-06 posted by (C)ゆきじ
一緒♪(上からw
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おはよう御座います。
初ピアスって萌えますよね!
お話、滾らせて頂きました(゚∀゚)ο彡゜
紅芭もピアス開けようかとか思ってみたりwww
游咲は刺青が多いのでNOピアスで行きたいので^^
あ、でも紅芭…不器用でしたwww
保留ですね^^;
by 七不思議 (2013-01-26 08:40)
塗り絵とイラストのご紹介、そして素敵なお話をありがとうですw
くろさん(原型)をリンク画像で使ってくださって嬉しいです。
お話、くろさんと記憶を失った鷲庵との間に一生大切にしたい思い出ができて幸せです(感想は某BBSに書かせていただきましたねw)
by 希紫ルオン (2013-01-26 09:52)
■七不思議 さま
ありがとうございます♪
初ピアスvvv
ちょっと萌えますよね~(>v<///
紅芭くんも游咲くんも可愛いのでNOピアスでもOKOK★
もしも紅芭くんにピアス開けたら、なんだか色々プレゼントしそうな水羽矢さんw
上手く付けられないと言ってたら「つけたげる♪」とか言っては嬉しそうにしてるかも(^^///
もしそうなったら水羽矢さんも触角にピアス開けてお揃いとかしてても素敵ですねv
■希紫ルオン さま
ありがとうございます♪
素敵な原型イラストに惚れ惚れですvvv
塗り絵も綺麗でほっくりしちゃってます(^^///
お話の方も感想ありがとうでしたv
始まりの思い出///
キュンとしちゃいますね(^^///
by ゆきじ (2013-01-29 01:36)