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セシュカのお話(前編) [→セシュカ]

■コケモモさんと萩梨さんへ捧げ物♪
■セシュカのお話(前編)w
■ねこしょうかい★
_____

■コケモモさんと萩梨さんへ捧げ物♪
今回はお話なので、挿絵っぽい物ですw

novel_sesyuka101101.jpg
コケモモさんと萩梨さんのみお持ち帰り下さい♪

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続きに原寸がありますw
本文と共にお楽しみ下さいv
_____

■セシュカのお話(前編)w
3人で成り切りチャットで遊んでおりましたら、お話が一本通ってしまいましたので、分担して清書してみましたw
セシュカメインのお話なので、ゆきじの方から纏めてご紹介ですv
今回の書き手様は萩梨 さんvvv

 ̄ ̄『それは最初の』(前編) ̄ ̄

とある晴れた昼下がり。
私以外の住人が出払っている我が家にこんこん、とドアを叩く音が響いた。
急いで駆け寄ってドアを空ける。
「ごめん下さい、お邪魔します」
「お邪魔するわ」
そこに立っていたのは私の友人、セシュカちゃんとJuliaちゃん。
セシュカちゃんは物腰が穏やかでかわいい年下の女の子。
纏っているふわりとした淡いピンク色のドレスに加えて小柄で細い体格がいかにもオヒメサマって感じ。
対してJuliaちゃんは黒いひざ上ワンピースや栗色の髪を二つ結びにしているあたり、活発って感じがにじみ出ているひと。
実際彼女はサーカス団の一員―――しかも軽業師なので、その推測は間違っていない。
セシュカちゃんと比べると長身さが際立って、なんかちぐはぐな感じがして面白い。
「二人とも、いらっしゃーい!」
「こんにちは、お呼ばれして頂いて…これ、心尽しですが」
セシュカちゃんが手土産であるらしい小さな箱を手渡してくれた。
私はその包装の中身が知り合いが経営している喫茶店「wain」の焼き菓子のセットであることを知っている。
「うわあLeevaくんとこのお菓子かな!? ありがとうっ」
「あ~、あそこのカフェね」
「はい、折角なので美味しいの下さいって、お願いしたんです」
「うんうんっ。あそこはなんでも美味しいけど、焼き菓子はお茶にあうし、ぴったりだなー!」
人を家に招いて立ち話もなんなので私は二人を居間に案内し、テーブルに腰を落ち着けるよう勧めた。

novel_sesyuka101101.jpg

「みんな、何か飲む? 何がいい?」
「私はルフィルトちゃんのお任せで頂いちゃおうかな?」
「あ、私は紅茶で」
各々の返答を聞いて、それなら二人とも紅茶でいいかと結論を下してキッチンへ行った。
まあ、実は聞く前の時点で紅茶を用意していた建前、コーヒーがいいとか言われたらどうしようかと思ってたんだけどね。
ティーポットに熱湯を注ぎ、適当な色に染まればポットから茶葉を除いて三人分のカップに注ぐ。
「はい、どうぞ」
「頂くわね」
カップを渡して、私もようやく腰を下ろした。
「ルフィルトお姉さんのように自分でお菓子とか作れたら良かったんですが、一人で作った事が無くて…」
「今度Leevaくんに教わったら? ガイアにでも作ってあげてっ」
少し恥ずかしそうに話すセシュカちゃんに、Juliaちゃんは少しからかう響きを持たせて返した。
「ふわ…!? その、ガイアさん…!? …あ、紅茶ありがとうございます」
セシュカちゃんは少し動揺を見せたけど、上手く取りつくろったみたいだ。
会話を切り上げられてホッとした様子を見せる。
「ふふ、安心するのは早いわよ セシュカちゃん」
「え? な、何ですか?」
セシュカちゃんはちょっと怯えたような表情で私達を見る。
「今日はガールズトークで楽しみましょう!」
「ガイアくんとどこまでいってるのー?」
Juliaちゃんと私は共犯めいた連携でセシュカちゃんに言い寄った。
たぶん、私達の顔はひどくにやついているだろう。
「…。…!?」
「気になるわ~」
「ど、どこって、そんなの。どこにも…!」
「照れてる? 照れてる? かわいーなー」
「か~わい~」
「照れてなんか…」
そういいつつも完璧に赤面してますセシュカちゃん。まっかっか。
私達が次々畳みかけていくせいで彼女の処理能力、許容能力その他がオーバーヒートしてます。
「まあ、今日はしっかり聞かせてもらうぞー!」
「私も! ルフィルトちゃんも聞かせてね!」
「そうですよ、ルフィルトお姉さんもお話聞かせて下さい」
まさかのJuliaちゃんによる私への方向転換に驚く。
セシュカちゃんも逃げ道ができたと思ったのか、道連れができたと考えたのか、素早くその話題に乗った。
「え? 私はそんな話すようなことなーんにもないじゃない?」
「そうなんですか?」
「何言ってるのよ。くろくん、どうなったの?」
「時々黒髪の人と歩いてたとか聞きますよ?」
流石は情報通のJuliaちゃんと聡いセシュカちゃんだ。
痛いところというか…核心をついてくる。
「く、くろさんは…くろさんはかんけーないです!」
「そう、なの?」
セシュカちゃんのきょとんとした表情に二の句が継げなくなる。
確かに、関係無いって言うのは嘘だ。
「あ、じゃあ、赤い髪の人と一緒だった、とも聞いた事がありますよ?」
「あ~、私も聞いたことあるわ。モテモテね、ルフィルトちゃんっ」
セシュカちゃんが奏ちゃんのことまで知っているとは思わなかった。
私は更に退路を断たれたような気持ちになる。
「いや、あの、確かに関係ないわけじゃないよ!? ただただ、二人とは健全なお付き合いを…!」
「あ、じゃあ、やっぱりくろさんと言うお方とお付き合いをされてるんですね!」
「そっ、そういう意味のお付き合いでもなくっ、えっ、うー…」
セシュカちゃんは弾んだ声で言うのに対して、私は少しあわてた。
その目の輝きだとか口調は明らかに私の言ったことを誤解しているからだ。
私の言った“お付き合い”というのはもっと広義的な…お友達付き合いのそれだ。
少なくとも、くろさんはそういう風に私の事を考えているだろうし…。うーん。
「可愛いわ~。私もそんな恋がしてみたいっ」
「Juliaさんは、何方かいらっしゃらないんですか?」
「そーだよ! Juliaちゃんどーなの!?」
「ないない! 私も周りに、いい男はいないの」
ため息交じりに吐き捨てたそれは間違いなくサーカス団の同僚に向けてのそれだろう。
いろいろ話は聞いてるからなあ…。ご愁傷様です。
「綺麗だから、沢山声をかけられていそうですのに」
「そんなことないって!私より、ふ・た・り!」
「じゃあ、セシュカちゃんを尋問しよう!」
「了解!」
私は自分から提案することで自分からセシュカちゃんへ尋問の標的を外させて頂いた。
またもJuliaちゃんと共謀するような形になる。
「ええ!? 私、尋問されちゃうんですか!? こ、困ります」
「まあまあ、じっくりきかせてきかせてっ」
上目遣いで本当に困ったような表情を浮かべるセシュカちゃんに一瞬同情の念が湧いたが、
情けをかけると自分が標的になることは重々承知しているのでスルーする。
「うう; じゃあ、次はルフィルトお姉さん、聞かせて下さいね、きっとですよ?」
しかし、しっかりセシュカちゃんに釘を刺されるのでした。
「うー…。まあ、わかったよう。さあ、沢山恋愛事情を聞かせるのだっ!」
私は半分開き直りながら言った。
「沢山って言われても…。ガイアさんとは雨の日にお会いして、沢山助けて頂いて、とても親切で、凄く優しい方なんですよっ」
聴衆二人は適当に相槌を打ちながら、にこにこしながら話すセシュカちゃんの言葉を洩らすことのないように聞いている。
「一緒に星を見たり、お花を見に連れて行って下さったりして…ホントにお優しい、素敵な方なんです…!」
「この幸せ者~!」
「きゃー、素敵っ」
「一緒にいたら、時の経つのも忘れてしまいそうです…」
セシュカちゃんはもはや陶酔にひたりながら話している。
「出来たら、もっと一緒に居たいけど…余り沢山は外出出来なくて、ちょっと残念です」
そういうと、先ほどまでの幸せそうな表情が少し陰った。
「ガイアの方も色々あるしねぇ~」
「Juliaさんはガイアさんの事、何かご存じなんですか?」
溜息混じりのJuliaちゃんの言葉に、おっとりとした性格のセシュカちゃんが珍しく早く反応した。
「ふふふ~♪ ひ・み・つ。知り合いに情報屋くんがいるのっ」
「なにそれー! きになるっ」
「私も、ガイアさんの事、もっと知りたい」
「だ~め!! こういうのは自分で知らないと!」
Juliaちゃんは悪戯っぽく笑う。
「はう…。そ、そうですよね、大事な事は自分で知らないと駄目ですよね!」
「むー…、ガイアくんの彼女さんでもダメなのっ?」
「だーめっ。まあ、ルフィルトちゃんならいいかな~?」
「え、ほんと?」
「むぅ~っ。Juliaさんのいじわるぅっ。ルフィルトお姉さんは、聞いたら教えて下さいますよね?」
頑なに断るJuliaちゃんが何故か私に教える許可をくれたのが、セシュカちゃんにとって彼の事を知る唯一の光明に見えたのかもしれない。
しかし、情報源である彼女がダメだというなら私が許可を与えるわけにはいかない。
「んー、どうかなあ?」
「ふゎあんっ。もう、もう、いいです!」
私がそう言うと拗ねたように頬を膨らませた。かわいいなあ。
でも、紅茶に口付けた瞬間ちょっと怒ったようだった彼女の表情が一気に柔らかくなる。
「あ、この紅茶、とっても美味しい」
「えへへっ、そうかなあ?」
沸騰させたお湯をティーポットに注ぎ、適当な色がついたらカップに注ぐ。
お客さんに出すものといえど、私は紅茶の淹れ方に関してはそこまで造詣が深いわけではない。
だからいつも通りの手順で紅茶を淹れて、いつも通りの出来のそれを二人に振る舞った。
Juliaちゃんはともかく、プロの料理人とかを付き従えてそうなセシュカちゃんの舌を満足させてあげられるのかはかなり不安だったけれど、杞憂に終わったみたいで良かった。
「はい、ルフィルトお姉さんはお茶を入れるのもお上手なんですね」
「誰かに教わってたりする?」
「んー、美味しい紅茶作れないとセリノちゃんが怖いからなあ…」
間違いなく私の紅茶の淹れ方が上達したとしたら、彼女が原因だ。
彼女は案外グルメで、そして美味しくないものを口に含んだ時はすぐ表情でわかる。
あまりに美味しくないものを寄こすと無言の圧力をかけてくるので、私は逐一気を使っている羽目になっている。
例えば、ポットやカップは事前に温めておく。
お湯は沸騰したてのものを使う。
そしてお茶に良い色が付いたら茶葉をすぐに取り除く。
単純ながら確実なルーティンワークが身に付いたのは間違いなくそういった彼女のやり取りによるものだ。
「うふふ、可愛いお師匠(センセイ)様がいらっしゃるんですね」
「でも、実はLeevaくんのいれ方とか見て技術を盗んでたりするよ!」
私の言葉にええっ、と驚くJuliaちゃんは驚いた。
「Leevaさんはお茶もお菓子もお上手ですものね」
「正面から弟子になっちゃえば?」
「ええー! じゃあ、みんなで花嫁修業しようか?」
私の言葉にセシュカちゃんの顔が一気に赤くなる。
ああ、花嫁って単語に反応したのかな。
だから私はこう言ってあげる。
「セシュカちゃんはガイアくんを餌付けできるくらい料理上手くなりましょうっ」
「そうだね、餌付出来るぐらいにはならないとー!」
同調してくれたJuliaちゃんの言葉にセシュカちゃんはどこか不思議そうな顔をしながらも頑張ります、といった。
「でも、お料理習えるのはうれしいです。ウチでは御厨には入れて貰えないから」
「あら~、もしかしてお料理未経験?」
「厨房の熱で熱を出して倒れちゃうって言われるんです。だから本当に作った事なくて」
「そっかあ…。」
セシュカちゃんが料理ができないのは何も良家のお嬢さまという身分のせいではなく、彼女の身体の問題なのだ。
彼女は今、“ 生きているだけで奇跡”だという。
陽に長く当たれば熱を出し、水に浸ってしまえば風邪を引いてしまうというのはこの年頃の子にとってどれだけ不自由を与えているんだろう。
「今度、実験料理食べさせてっ。私達が少しぐらい教えてあげるから、ね」
私が悶々とそんなこと考えているうちに重くなってしまったその場の空気を振り払うようにJuliaちゃんがにっ、と笑う。
「はい、頑張って習って、美味しいお料理が出来るように頑張りますね。きっと、教えて下さいね」
セシュカちゃんがふわりと笑って言った。
「もちろんっ!! 私は嘘はつかないぞ!」
「ルフィルトお姉さんも、ですよ?」
「もちろんだよう!」
そう言うとセシュカちゃんは嬉しそうに頬を染めた。
つられて私達も温かな気持ちになる。
「いい子いい子」
「ふふふっ、やっぱりセシュカちゃんかーわいいっ」
Juliaちゃんと私と、二人してセシュカちゃんの頭をなでる。
ちょっと照れと困惑した表情を浮かべるけど、されるがまま撫でられてくれている所がまたかわいい。
「はぅう? あの、私、そんなに小さな子じゃないですよ?」
「私達にとってはまだまだ子供よ~」
「まあ、この中では一番年少だし、ね?」
「16歳はまだまだ子供ですかぁ~…。大人になりたいなあ…」
セシュカちゃんはがっくり肩を落とす。
「大人のセシュカちゃんかあ…綺麗だろうなあ…」
「ガイアさんはゆっくり身の丈に合った成長をすればいいって、言って下さるんですが私ばかり子供だと、ガイアさん詰まらなく無いかと心配になるんです」
「へえ、ガイアにしてはいい事言うのねぇ」
そのJuliaちゃんの言葉には正直私も同感だった。
彼の武勇伝は…よく耳に入ってくる。
「でも私は、Juliaさんみたいにしっかりした人に成りたいし、ルフィルトお姉さんみたいに優しい、何でもできる人になりたいの」
セシュカちゃんがあまりに真剣にそんな事を云うものだから年長者二人がまるで子供みたいに顔を赤くしてしまう。
「私みたいになったら、楽しすぎて困っちゃうよ!」
「ふふ、Juliaちゃんたら…」
照れ故に軽く誤魔化すJuliaちゃん。
「ううん、Juliaさんみたいに、何でも楽しめるような余裕のある人になりたいの。何があっても笑っていられるような…」
「余裕があり過ぎても私的にはどうかな~。仕事柄、ずっと笑顔じゃないといけないの」
セシュカちゃんは憧れを持った声色で言うけれど、Juliaちゃんの顔色は少し淀む。
「Juliaちゃんみたいなセシュカちゃんっていうのもなんだか可笑しいなあ…」
「でしょでしょっ可笑しすぎる!」
「ええ~? 私、Juliaさんのようになったらそんなに可笑しいですか?」
Juliaちゃんの表情と共に一瞬曇っていた空気がぱあっと晴れた。
彼女なりに感傷に浸ってたんだと思うけど、こんな私の言葉で笑顔に一転できるあたりやっぱりこの子は強いんだなあって思う。
そしてセシュカちゃんはちょっと拗ねている。
「じゃあ、ルフィルトお姉さんのように暖かい人になりますっ」
「でもな~。ルフィルトちゃんみたいにぽえ~っとしてたらな~」
「ぽえ~っだなんてしてないよう!」
「してるの。でも、そこがルフィルトちゃんのいい所!」
「くすっ、そうかも」
なんだかからかわれているのか誉められてるのかよくわからないけど、とりあえず言葉通り受け取っておこう。
「セシュカちゃんはセシュカちゃんらしく、よ」
「そうだよ! セシュカちゃんがあるがままに成長してくれた方が、お姉さんはいいと思うよ?」
「でも、目標にしてもいいですよね?」
セシュカちゃんは大真面目だ。
「Juliaさんみたいに、どんな時も笑っていられる強い人に、ルフィルトお姉さんのように、いつでも柔らかく暖かく迎えられるような人になりたいです」
「ふふっ、応援するよっ」
「私も私もっ」
そうは言ったけど、私はこの子がこのままの性格で健やかに真っすぐ育ってくれることが一番いいな、と思った。

「…そう言えば。ルフィルトお姉さん、くろさんはどんな方ですか?」
「どんな人~?」
ガールズトークに話の脱線、話題のいきなりの転換は付き物だが、これはひどい。
とうとう私の番か、とは思ったがまだ覚悟も何もできていないのに…!
ちょっとだけ、セシュカちゃんを恨んだ私なのでした。



「そうなんですか。武勇伝…。私、本当に知らなくて…」
私の知らないところで、ガイアさんは危ないことをしているらしい。
ガイアさん、私の大好きなひと。
時々、二人でお出かけしたりする程度だけど、私は彼の事を知っていたつもりだった。
でも、今日の話の中には、私の知らないガイアさんが沢山いた、の。
「一人で不良少年を複数相手に快勝を収めただとか、地域の不良の元締めを倒しただとか聞いたよ?」
「そんな、危ない事、してるの?」
ルフィルトお姉さんの言うそんなガイアさんも、私は知らない。
Juliaさんだって彼について私よりは知っている風だった。
自分の無知さや悔しさに思わず眼が潤んでくる。
「ほらっ! そういう所がイケないの!」
「はう?」
Juliaさんが私を叱咤する。
「そういうふうに心配されると、ケンカの事とか言えないでしょう?」
「…。そう、かも。ガイアさんも、何か考えのあっての事でしょうし…。心配、してばかりじゃ、駄目ですよね」
私を叱りながらも、宥めすかすようにJuliaさんは言う。
彼女の意見はもっともだ。
私が弱くて、頼りないから、彼は私に全てを打ち明けられないのかもしれない。
少なくとも私が知ってるガイアさん―――穏やかで、聡明で、優しい彼なら、そのはずだ。
「…。いつか、私が聞いていられるくらい強くなったら、お話してくれるかしら?」
「そうね~! ガイアもそんな秘密主義じゃないしね!」
「じゃあ。強くならなくっちゃ、ですね」
決意を込めて言った。
私は、これから強くなって、全てを受け止めてあげられるようなひとにならなくちゃいけない。
そうしなきゃ、いつまでたっても何も知らない子供のままだ。
「がんばれーっ! お姉さん応援してるよっ」
「私も応援してるわよ!」
「はい」
ルフィルトお姉さん、Juliaさんに感謝をこめて、笑う。
「うふふ。楽しいですねっ」
「ふふ、ほんと」
「そうだね、楽しいね」
私達は顔を見合わせた。
恋の事、Juliaさんのサーカスのこと、いろんなお喋りをした。
気づけば時計の針は随分回っている。
病床に伏せている時がこんなに早く過ぎてしまえばいいのになあ…。
「私、こんな風にお友達とお話した事もなかったから、とっても楽しいです。学校も、通ってないし…」
「そうなの? じゃあ、毎日でもうちに来てくれたらいいのに…」
言外に含めてしまった寂しい気持ちを汲み取ってくれたのかな。
ルフィルトお姉さんがそう優しく言ってくれる。
「私も言ってあげたいけど、毎日はムリね…。奴らが煩いから」
「Juliaさんはお仕事がありますもの」
「でも、2人なら特別にいつでもデートの場としてサーカス見学を提供するわ!!」
「で、でーと…」
その言葉で、細い綱の上を歩くJuliaさんを下から眺める私を想像する。
もちろんとなりには、ガイアさんがいて…。
そんな妄想で、つい顔に血が上ってきてしまった。
でも、
「デートなんか。しないです、よ?」
「え? ガイアくんとはデートしないの?」
「二人でお出かけは、します、けど…」
私がそう言うと、二人が不可解な顔をする。
「え~!! だって、星見たり、花畑行ったりしてるって…言わなかった?」
「しますよ? でも、デートじゃ、ない、もの」
「これは立派なデートでしょ!?」
Juliaさんが私の方に身を乗り出して言う。
「セシュカちゃん、嘘はいかんなあ…」
「でも、でも、まだ。好きって、言って無い、から」
二人は目を丸くした。
「ええ~っ! そうだったの!?」
「好きッて言ってないとは…驚きね~!!」
本当に意外そうに二人は言う。
両想いの恋人同士みたいに、見えてたのかな?
まだ、気持ちは伝えてなかったのに。
「ガイアさんが、私が想うのと同じに大切にしてくれてるのは、わかるの」
「じゃあ、好きって言っちゃいなよ!」
「好きって言ってみなさいよ!!」
「でも、言いだせないの」
私は一呼吸置く。
自明のことだとしても、やっぱりこの事実はひどく、さみしいものだから。
「私、…いつか先に。居なくなるかも、しれないから」
「あー…。それを気にしてるのかあ…」
お姉さんの目が、ひどく寂しそうで、悲しそうな形にゆがんだ。
Juliaさんも、先ほどまでの笑顔が真剣な面持ちに変わっている。
そんな顔をさせたいわけじゃないのに…。
「それを思ったら、言いだせなくて」
「だいじょうぶだよ? みんな、そんな事気にしてないわよ!」
「確かに絶対なんかじゃないし、まだまだずっと傍にいられるかも知れないけど明日の朝、目覚めなかったらどうしようって、思う事もあるの。
私はね、眠って、明日目覚める事を幸せな気持ちで待ってるけど待つ方は、きっと辛いよね?」
わだかまっていた不安を一気に吐き出してしまう。
ああ、ああ、ごめんなさい。こんなこと、聞いても困っちゃうよね。
でも、二人はどこまでも誠実に聞いてくれていた。
「じゃあ、その時の為の思い残しがないように、と考えたら? 辛いかも知れないけど…でも、私は一番今が大事と思うわよ?」
「セシュカちゃん。それでもきっとガイアくんは、貴方の思いを伝えてほしがってると、私は思う」
「私、好きと、伝えても、いいの、かな?」
二人は、優しかった。
でも、それでも、まだ不安で、後押しがほしい。
そしたら、ルフィルトお姉さんがそっと私の手を握ってくれた。
「私は、それがいいと思う。私はセシュカちゃんに先立たれてしまうのだとしても、あなたと友達になれて、よかったから」
その言葉に、すくわれた気がしたの。
握られた手から暖かな充足感が心の隙間を埋めるイメージを脳裏に得る。
それは目にまで溢れていくみたいで、ひとひらふたひら、暖かい欠片が零れてく。
「…。うん、ありがと。嬉しい。言って、いいんだ。私」
「セシュカちゃんったら泣き虫だなあ…」
「はい、ハンカチ。やっぱり、泣いてるセシュカちゃんも可愛いわ~。…一番は、笑顔だけどね?」
私を撫でてくれるルフィルトお姉さん。ハンカチを渡してくれたJuliaさん。
二人の包容されるような温かさに私は言葉にできなくて、こくんと頷いた。
「ありがとう。二人とも、えへへ、ちょっと勇気貰っちゃった」
「それはよかった!」
Juliaさんはにっこりと笑ってくれる。
「うんうん。これで、ガイアくんに告白する勇気は湧いたのかな?」
「そうね~、まだだったら私が勇気あげちゃうよ?」
「うん。いつか、そう遠くない内に、伝えたい、な」
おどけた調子で言う二人に、私は笑みを浮かべた。
二人とも、もう大丈夫だよ。十分すぎるくらい勇気を貰ったよ。
「ファイトっ。私は、告白報告待ってるからね」
「はやく、ちゃんと両想いになってほしいなあっ」
「もう、両想いよ~。まだ、告白してないだけ…でしょう?」
「えへへ。頑張るっ。は~。考えたらドキドキしちゃう~」
告白、かあ…。
想像するだけで、熱が出た時より頭がふわふわしてくるなあ…。
「確かにね!あ、今から告白しちゃえば?」
「…ええ!? い、今から!?」
お姉さん、それはあまりに唐突すぎるよう…!
「大賛成!! 言っちゃいなよ!」
「どうせ、成功するなんてわかりきってるじゃないっ」
「そ、そんな、無理、無理無理」
成功するかしないかの問題じゃない。
気持ちの問題だよ…。
「無理だと思うから無理なのよ? 出来ると思えばできるんだからっ」
「だって、まだ、どんな風に伝えていいのか、分からないよ…!」
「真っ直ぐなセシュカちゃんの気持ち、伝えればいいと思うわ」
流石Juliaさんは行動派だ。
すごいけど…うう…、私にとってはいきなりすぎるし…、
「それに…」
「それに?」
「二人に見られてたら、恥ずかしい、よ!」
だんっ、と思わず机を叩いてしまった。
しかも興奮しすぎたか息が上手く出来なくなってきた。
「告白するときは席を外しますとも!」
「もちろんよ!」
「…。ちょっと、待ってね。あんまり、ドキドキしすぎて…」
私は荒くなってしまった息を整える。
ひどくくるしい。
ルフィルトお姉さんが心配する声、Juliaさんが背中をさすってくれる感覚。
ちょっとずつ落ち着いてきたのか、静かな呼吸と共にそれらが明瞭になって戻ってきた。
「…。ん、もう、大丈夫、そう」
「良かった…」
Juliaさんが安心した風ににっこり笑った。
「やっぱり、無理は禁物かな?」
ルフィルトお姉さんは心配そうに私の顔を伺い見た。
「でも、決めたんだったら今すぐいってらっしゃいよ」
「…。ん、うん。が、頑張って、みる」
Juliaさんのように強い、行動的なひとになろうと思ったのなら、動くのは、今だ。


三人でガイアんちにやってきた。
もちろん、その目的はセシュカちゃんがガイアに思いを告げるため。
セシュカちゃんは今、1人でガイアんちのドアの前に立っていて、
私とルフィルトちゃんは少し離れた場所で、セシュカちゃんを見守っていた。
彼女はガイアんちの呼び鈴を、押すか押さないかで格闘しているんだろう。
呼び鈴に手を伸ばしては降ろす、という動きを何回も繰り返していた。
不安そうにこちらを見るセシュカちゃん。
私達は言葉にこそ出さないが、目線で“頑張れ”とエールを送った。
セシュカちゃんはまた呼び鈴と対峙すると深呼吸を一つついた。
覚悟ができたのか、彼女はとうとう呼び鈴を鳴らしていた。
在宅か、不在か。
このモチベーションでセシュカちゃんが挑めるのは今しかない、お願い、居て頂戴―――
やがて、ドアが空いた。
出てきたのは金髪の少年―――もちろん、私達が願い祈った人間ではない。
SI-Oだ。ガイア、奏琉、私の共通の知り合いである。
セシュカちゃんとSI-Oの会話はここからじゃ遠くて聞こえない。
やがて、セシュカちゃんがSI-Oにぺこりと頭を下げて、こちらに戻ってきた。
「ガイアくんいなかったの?」
「はい、奏琉さんと二人で何処かへ出かけてて、危なくて、喧嘩で…えと、えっと喧嘩、危ないかも…!」
「大体察しがついたわ」
ガイアの馬鹿、奏琉と連れだって喧嘩しに行ったのね。
間の悪い男…!
「どうしよう!?」
「なんてタイミング悪いの…」
パニック状態なセシュカちゃん、頭を抱えるルフィルトちゃん。
でも、あいつらならすぐに戻ってくると思うし、そこまで心配ないと思う。
「気にしなくて大丈夫よ?」
「でも、でも…」
「奏琉くんと一緒なら、絶対に負けないだろうし…一人でも十分強いけど」
その言葉に、セシュカちゃんは少し落ち着きを取り戻す。
「セシュカちゃん、落ち着いて? 大丈夫よ」
「…はい」
セシュカちゃんはぎゅう、とルフィルトちゃんにしがみついた。
私もよしよし、と頭をなでてあげる。
「なんだかセシュカちゃんのこと撫でてばっかりだなあ…」
「ご、ごめんなさい」
「大丈夫よ、悪いことじゃあないから」
やっぱりルフィルトちゃんの優しさっていうのはすごいみたい。
見てるこっちまで温かい気持ちになってくるんだもの。
きっと今、セシュカちゃんの安心感は相当なものなんだろうなあ。
案の定、あっという間に落ち着きを取り戻したみたい。
「…。そう、だった。私、ガイアさんの事、信じるって、決めたんだもん。こんなオロオロしたら、駄目ですね」
そういって、笑顔を見せた。
「セシュカちゃん、しっかりしてきたね」
「シャンとなさい、ね?」
「…はい。でも、もう少し、握っててもいい?」
セシュカちゃんはしがみついていた身体をルフィルトちゃんから離したけど、服は握ったままだった。
「いいよ。今は、そうやってちょっと気を落ち着けようか」
「可愛い~! ルフィルトちゃんいいな~」
「ありがと」
随分場が和やかになってきたのはいいけど、このままじゃ終われない。
きちんと想いを伝えなきゃいけないんだ、セシュカちゃんは。
「さ~あ、これからどうしましょうか?」
「待ってても、いい?」
「待っててもいいけど…」
「探しても、足手まといになるし…でも、心配で、帰れない」
そう思うのも道理だろう。
でも、そんなことを話している時、私はある好奇心が湧いてしまった。
私は小声でルフィルトちゃんに言った。
「ねえ、ルフィルトちゃん、少し見てこない? 見学…したいなっ」
「ん…いいかもね」
ルフィルトちゃんも小声で返してくれた。
もちろん見に行くのは…ガイア達の喧嘩っぷりだ。
心配半々。好奇心半々。
それにガイアが怪我でも作って帰ってきたら、セシュカちゃんが可哀想だしね。
喧嘩相手、私が全部ボッコボッコのぎったんぎったんにしちゃうわよ!
…私が加勢するような戦況だったら、の話だけど。
「じゃあセシュカちゃん、SI-Oに頼んで入れてもらったら?」
「ご迷惑になったら…」
「大丈夫じゃない?もともとガイアの家でしょう?」
「でも。ガイアさんがご不在ですし」
セシュカちゃんは少し不思議そうな顔をする。
「不在の所にSI-Oが居るんだから平気っ」
「まあ、SI-Oくんならきっと気にしないでしょう」
「そういうものですか?」
「そういうものっ! じゃあ、私達は少し辺りを散策してくるねッ」
小首を傾げたセシュカちゃんを置いて、ルフィルトちゃんと私はガイア達の元へ向かうのだった。

__2010-10-12 萩梨 さん:作__

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リア生活が佳境に入る寸前にガッチリ捕まえて書いて頂きましたv
ガールズトーク編です(>ワ<///
ガールズトークさせよう! って始めたナリチャがこんなに転がってちゃんとお話として締まるとは思っていませんでした。
参加、協力、執筆と本当にありがとうございますvvv
これからもどうぞ仲良くして下さい~★
ルフィルトおねーさん大好き~(>w<///

続きはゆきじの挿絵っぽい物次第ですorz
が、頑張りますw
_____

■ねこしょうかい★
猫写真の紹介です(笑)<別名:親ばかコーナーです(>ワ<///
takara8-15
takara8-15 posted by (C)ゆきじ
ん?


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